源氏物語の旗揚げ公演。
人間国宝 堅田喜三久氏の作曲「三途の川」「ひとだま」に着想を得て演出。
源氏物語の「もののあわれ」な世界観にふさわしい幽玄な音色に誘われ、源氏物語の原作にはない「三途の川」という新場面を私の新解釈で表現してみました。
暗闇に雅楽の音色が響き、スポットライトに浮かび上がるのは、なんと、赤いロープで縛られ口に扇子をくわえてこらえている六条御息所。
口には出せない秘めたる嫉妬の情をこらえる八方ふさがりの心情の描写です。
六条御息所の心を想像していると妄想が膨らみ、死後も容易くあの世へ行くことさえできずに苦しむ姿が浮かびました。
六条御息所と同様に成仏できずに彷徨う魔物たちが待ち受ける三途の川。
黄泉の扉の向こうを恐れる六条御息所。現世へ戻ろうとして、はっと我に返る。
現世での生き地獄(嫉妬の苦しみ)へ戻りたくなどない。
それであればいっそのこと勇気をもって黄泉の扉の向こうへ行くことを決意し、毅然とした立ち姿と迷いを捨てた眼差しで暗転する。
この演出に欠かせないのは生霊役のイトカズナナエさん。
「お客様に鳥肌を立たせて下さい」という要求に200%こたえて下さり、後ずさりしてしまうお客様がいらっしゃいましたよ。
大物会長さんさえも「帰りの夜道が怖くなったよ」と震えさせてしまい、大成功でした!
演者の衣擦れの音や息遣い、お客様の鼓動まで聴こえてきそうな幻想的な夜でした。
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